耳の病気のいろは

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耳の病気の種類

耳の病気には、外耳炎、中耳炎、内耳炎、耳の腫瘍など、多くの種類があります。
各病態の症状や原因は以下のとおりです。

【外耳の病気】
●耳づまり
耳づまりは耳垢塞栓ともいい、耳あかが外耳道をふさいでしまうことをいいます。特に症状がみられない場合もありますが、かゆみから聴力低下までさまざまな症状が現れることもあります。耳づまりは特定の病気ではなく、症状、現象であるといえます。

●外耳炎
外耳炎は、外耳道が感染によって炎症を起こした状態です。 外耳炎には、外耳道の全域にわたる「びまん性外耳炎」と、耳に小さなおできができる「限局性外耳炎」があります。びまん性外耳炎はさまざまな種類の細菌や、まれに真菌によっても起こります。アレルギー、乾癬、湿疹のある人、頭皮に皮膚炎がある人は、特に外耳炎にかかりやすくなります。耳あかを取っていて外耳道を傷つけたり、耳に水が入ったり、ヘアスプレーや毛染め剤などの刺激物が外耳道に入っても、外耳炎になります。急性の外耳炎はプールで泳いだ後によくみられ、水泳耳やスイマーズイヤーなどとも呼ばれます。耳栓や補聴器の手入れを怠って外耳炎にかかることもあります。

●軟骨膜炎
軟骨膜炎は、外耳の軟骨が感染によって炎症を起こした状態です。 耳のけが、やけど、虫刺され、ピアス、おできなどが軟骨膜炎を引き起こすことがあります。軟骨膜炎はまた、免疫力が低下している人や糖尿病の人に起こりやすい傾向にあります。

●耳の腫瘍
耳の腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。耳の腫瘍のほとんどは、本人が自分で気づくか、聴力の低下を感じて来院した患者の耳の中を医師が診察して見つかります。

【中耳と内耳の病気】
●感染性鼓膜炎
感染性鼓膜炎は、ウイルスや細菌の感染により鼓膜が炎症を起こした状態で、マイコプラズマによるものが最も多く見られます。炎症を起こした鼓膜の表面に小さな水疱ができまるのが特徴です。水疱は中耳炎でもできますが、感染性鼓膜炎の場合は中耳の膿や耳だれはみられません。

●急性中耳炎
鼻やのどからウイルスや細菌が耳管を通って中耳に入り炎症を起こします。急に熱がでたり耳が痛くなったりします。かぜやアレルギーの合併症としてよくみられます。成人より小児に多い病気ですが、症状や治療法は、成人と年長児ではほぼ同様です。

●滲出性中耳炎
滲出性中耳炎は、中耳内に周囲の組織からしみ出した水分(滲出液)が貯まる病気です。完治していない急性中耳炎や、耳管の閉塞から起こります。発熱や痛みはなく軽度から中等度の難聴をおこします。 耳管閉塞の原因としてはアレルギーがよくみられます。どの年齢層にもみられますが、特に小児に多く発症します。

●慢性中耳炎
急性中耳炎や滲出性中耳炎が治りきらないと、鼓膜に穴があいた状態が続くことがあります。耳だれと難聴が主な自覚症状となります。

●乳様突起炎
乳様突起炎は、耳の後ろの乳様突起という隆起した骨が細菌の感染により炎症を起こした状態です。この病気は未治療の、あるいは受けた治療が不適切だった急性中耳炎が、中耳の周囲にある乳様突起という骨へ広がることによって起こります。

●メニエール病
メニエール病は、自分や周囲がぐるぐる回るような感覚の激しいめまいが繰り返し起こる病気で、聴力低下や耳鳴りを伴います。原因は、内耳のリンパ液の産生量と吸収量のバランスが崩れることにより起こると考えられています。通常は、分泌と吸収が絶えず行われて、リンパ液は一定量に保たれていますが、内耳リンパ液の産生量が増えたり吸収量が減ったりすると、この均衡が崩れてリンパ液の量が増えてしまいます。産生量や吸収量が変化する原因はわかっていません。

●前庭神経炎
前庭神経炎は突然の激しいめまい発作を特徴とする病気で、半規管につながる神経の炎症によって引き起こされます。

【その他の症状】
●耳鳴り
耳鳴りとは、周囲の音とは無関係に、耳の中や頭の中でさまざまな音が聞こえるように感じる状態をいいます。耳鳴りは症状の1つであり、それ自体は病気ではありません。非常によくみられる症状で、程度の差こそあれ多くの人が一度は耳鳴りを経験しています。
大きな騒音や爆発音などによる損傷、耳の感染、外耳道や耳管の閉塞、耳硬化症、中耳の腫瘍、メニエール病など、耳に関連する病気やけがの75%以上が症状として耳鳴りを伴います。抗生物質の投与やアスピリンの大量投与なども耳鳴りの原因となります。
耳鳴りは耳以外の障害によっても生じることがあり、貧血、高血圧や動脈硬化といった心臓や血管の病気、甲状腺機能低下症、頭部のけがなどが原因となります。片耳だけの耳鳴りや、音の大きさが変わる拍動性の耳鳴りは、より重症の可能性があります。拍動性の耳鳴りは、腫瘍、動脈の閉塞や動脈瘤、その他の血管の異常によって生じることがあります。

●鼓膜穿孔
鼓膜穿孔とは、鼓膜に穴が開いた状態のことです。 鼓膜穿孔の最も多い原因は中耳炎ですが、爆風、平手打ち、潜水などで鼓膜にかかる圧力が急に上昇しときや、飛行機に乗っていて圧力が急に下降したときにも鼓膜穿孔が起こることがあります。熱や薬品による火傷も原因となります。また綿棒などの異物を耳の中に差しこんだり、樹木の枝や飛んできた鉛筆などが偶然耳の中に入ったりして、物理的に鼓膜に穴が開いてしまうこともあります。鼓膜を貫通した異物は、鼓膜と内耳をつないでいる耳小骨の連結を分断したり、耳小骨を壊してしまうおそれがあります。耳小骨の破片や異物が内耳に入りこんでしまうこともあります。なお、耳管が詰まっていると内外の空気圧の差が激しくなって鼓膜に穿孔が起こることがありますが、これを気圧外傷といいます。

●難聴
「難聴」とは音や声が聞こえにくくなることで、障害がさらに進んで聴力がほぼ失われた状態を「聾(ろう)」といいます。 難聴は高齢者に多いものの小児にも起こり、言語能力や社会適応性の発達を阻害します。「突発性難聴」は重度の難聴で、普通は左右どちらか一方の耳に起こり、数時間で急速に進行します。
外耳道や中耳の物理的な問題で音の伝導がさえぎられて生じるものを「伝音難聴」といいます。外耳道がふさがる原因は、耳垢のたまりすぎから腫瘍のようなものまでさまざまです。中耳の伝音難聴は水がたまって起きる場合が多く、特に小児の場合によくみられます。難聴は、内耳の感覚器、聴神経、脳の聴神経路がダメージを受けた場合にも起こります。これを「感音難聴」といい、薬物、感染症、腫瘍、頭蓋の外傷などによってこれらの感覚器や神経が損傷を受けて起こります。伝音難聴と感音難聴がどちらか一方ではなく、混在した状態も多くみられます。


耳の病気の予防策

●外耳炎
スイマーズイヤーを防ぐには、水泳の前後に消毒用アルコールと酢酸を同量ずつ混ぜ合わせた液を耳の中に数滴垂らす方法が有効です。そして、汚れた水の中で泳いだり、ヘアスプレーを使ったり、蒸し暑い場所で長時間過ごしたりしないようにします。
綿棒による耳そうじも、綿棒で分泌物などのかすが鼓膜の方へ押しやられてたまったり、小さな傷ができてしまうので、やりすぎは外耳炎の原因になります。

●中耳炎
いつも鼻をすすっていると、鼻の中の細菌が中耳に入って中耳炎を起こすことがあります。鼻はすすらずにかむようにしましょう。ただし、両方の鼻をつまんでしまうと、鼻の中の圧力が急激に高くなって鼓膜や中耳に圧力がかかります。すると、鼓膜の内側にある中耳に細菌が入りやすくなり中耳炎を引き起こしやすくなります。片方の鼻だけを指でふさいで、もう片方は絶対にふさがず開放した状態でやさしくかみましょう。

●難聴
加齢による老人性難聴をはじめ、難聴の原因の大半は予防できません。ただし、騒音性の難聴については、大きな音は避ける、音を小さくする、騒音源から離れるといった対策を、できるだけ実行することが望まれます。大きな音であればあるほど、その近くにいる時間は短くすべきです。またプラスチック製やゴム製の耳栓を外耳道に挿入する方法も、多くの状況で大変有用です。


耳の病気の治療法

●外耳炎
びまん性外耳炎の治療では、原因が何であれ、まず吸引器か脱脂綿で分泌物のかすを外耳道から除去します。外耳道をきれいにしただけで、聴力が正常に戻ることもよくあります。通常は抗生物質の点耳薬が処方され、腫れを抑えるステロイド薬や、痛みを抑える鎮痛薬入りの点耳薬を用いることもあります。外耳道がひどく腫れている場合は小さなガーゼを丸めて挿入し、そこに点耳薬を浸透させます。感染が外耳道を越えて広がった場合には、抗生物質の内服薬で治療します。
耳のおできの治療は感染の進行度によって異なります。感染が初期段階の場合は患部をしばらく温め、鎮痛薬で痛みを和らげます。化膿して口を開きそうになっているおできは、切開して膿を出します。その後、抗生物質を患部に直接塗布するか、内服薬を投与します。

●軟骨膜炎
軟骨膜炎の治療には、切開して膿を出し、軟骨への血流を回復させます。感染が軽ければ抗生物質を内服し、重い場合は注射や点滴で静脈内に投与します。

●耳の腫瘍
良性腫瘍ができて外耳道をふさぐことによって、聴力低下が起こったり、耳垢がたまってしまうことがあります。このような腫瘍は、手術で腫瘍を取り除くのが最も効果的な治療法です。治療後は通常、聴力は正常に戻ります。
「基底細胞癌」と「扁平上皮癌」はよくみられる悪性腫瘍で、紫外線を頻繁に浴びる生活を長く続けている人の外耳によくできます。これらの癌は発生直後であれば、手術で取り除くか放射線療法を行うことで完治します。進行癌では、外耳のかなりの部分を手術で取ることが必要になります。また、「耳垢腺腫瘍」は耳垢をつくる細胞の癌で、外耳道の手前側およそ3分の1に生じますが、さらに奥へと広がっていくこともあります。手術で癌と周辺の組織を摘出して治療します。

●感染性鼓膜炎
鼓膜炎は耳鏡で鼓膜を観察して診断します。感染がウイルス性か細菌性かを判断するのは難しいため、多くの場合は抗生物質と鎮痛薬を用いた治療が行われます。痛みを和らげるために、小さなメスで水疱を破ることもあります。

●急性中耳炎
中耳炎は細菌が中耳内で増殖し炎症をおこす病気ですから、治療には抗生物質を使います。抗生物質は内服することが多いですが、点耳といって直接外耳道につけることもあります。重症のときには抗生物質を注射します。耳の痛みや熱が高いときには解熱鎮痛剤を使って症状をやわらげてあげます。中耳内に膿がたまっているときには鼓膜をメスで切って膿を外に出します。膿が出てしまうと耳の痛みは軽くなり、熱も下がります。あいた鼓膜の穴は耳だれが止まれば数日で閉じます。
薬の治療や鼓膜切開によって、急性中耳炎の熱と耳の痛みは1~2日で良くなります。 しかし中耳の炎症はまだ残っており、途中で治療をやめてしまうと滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行してしまうことがあります。症状がなくなっても、炎症が完全にとれるまで治療を続けることが大切です。

●滲出性中耳炎
治療には金属の管やゴム球を使い空気を耳管から中耳に送り込む「耳管通気」を行います。抗生物質、消炎酵素剤などのくすりを飲んで、中耳に細菌が入らないように耳や鼻、のどの炎症を押さえることもあります。
難聴が重かったり耳管通気をしばらく続けても改善しない場合には、「鼓膜切開」を行って中耳にたまった水を抜きます。
鼓膜切開を行ってもくり返し水がたまってしまう場合には、「換気チューブ」を入れます。アデノイドは鼻の奥にある扁桃腺の組織で、これが肥大すると耳管の出口を圧迫して滲出性中耳炎の原因となります。このようなときには「アデノイド切除」の手術を行います。滲出性中耳炎は慢性の病気で治療には時間がかかり、また一度治ったと思っても風邪をきっかけに再発することがあります。滲出性中耳炎を悪化させると癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎という難治性の慢性中耳炎に移行することがあります。

●慢性中耳炎
慢性中耳炎を発症した場合は、外耳道と中耳を吸引器や綿棒でていねいに清浄し、ヒドロコルチゾンの入った酢酸溶液か抗生物質の点耳薬を処方します。
鼓膜は鼓室形成術で再建が可能です。耳小骨の連結が損なわれていれば、同時に修復します。真珠腫はそのままにしておくと重い合併症が起こるおそれがあるので、手術によって除去することが必要です。

●乳様突起炎
抗生物質の静脈注射や点滴により治療します。耳だれを採取して感染を引き起こしている細菌を特定し、最も有効と考えられる抗生物質を投与します。症状が良くなってきたら経口投与に切り替え、最低でも2週間は治療を続けます。骨の内部に膿瘍がみられる場合は、乳様突起開放術という手術を行って膿を排出する必要があります。

●鼓膜穿孔
耳を乾燥した状態に保ちます。感染が生じている場合は、抗生物質が入った点耳薬を使用します。通常はこれで鼓膜の穴はふさがりますが、2カ月しても治らない場合は、鼓室形成術で鼓膜を再建します。穴がふさがらないと中耳の感染が長びき、慢性中耳炎になることがあります。
鼓膜穿孔の後に伝音難聴が長く続く場合は、耳小骨の連結が崩れていたり、変形したまま固まっている可能性があります。これは手術で元通りに治すことができます。

●難聴
難聴の治療は原因によって異なります。中耳の滲出液が原因であれば、小児でも成人でも、鼓膜を切開して小さなチューブを留置します。チューブを使うことで、滲出液が再びたまるのを防止できます。小児の場合には、アデノイドを切除して耳管の通りを良くする手術が必要なケースもあります。耳管をふさいでいる腫瘍があれば切除します。自己免疫疾患による難聴は、ステロイド薬を用いて治療します。
鼓膜や中耳の骨が損傷を受けた場合には、再建手術が必要になります。耳硬化症の場合は、人工のあぶみ骨を代わりに入れることによって聴力が回復するケースがあります。脳腫瘍が難聴の原因となっている場合は、腫瘍を切除することによって聴力が保たれることもあります。
その他の原因には治療する方法がないものも多く、このような場合には、難聴をできるだけ補うための治療が行われます。中等度から重度の難聴の場合には、大半の人が補聴器を使用します。重度の難聴やほとんど聴力が失われた聾の人には、人工内耳が有効です。


耳の構造 
耳はおおきく三つの部分に分けられます。

1.外耳 音を集める耳介と、通路となる外耳道とを外耳といいます。

2.中耳 外耳道から耳の中を見ると膜がありますが、これは音によって振動し、増幅させる機能をする鼓膜です。鼓膜の中には、音を伝達する三つの小さい骨が鼓膜に付着されており、蝸牛まで音が伝達されます。これらの小さい骨を耳小骨と呼びますが、この耳小骨が入っている空間が鼓室です。
鼓室は耳管を通して鼻咽腔につながっています。

小児の場合、耳管の構造的な問題が滲出性中耳炎に影響を及ぼします。耳管は鼻咽腔(鼻の奥)と中耳腔をつないでいる管で、大気と中耳の圧を同じにするためにあります。中耳はこの管によって換気されています。嚥下をすることで耳管が開きます。その他の時は中耳を不必要な圧から守るために閉じています。

3.内耳 内耳は大きく蝸牛といって、聴力をつかさどるところと、前庭といってからだのバ ランスを取る所に別れますが、アブミ骨振動は卵円窓に伝わり、そこから蝸牛の中のリンパ液を波動させて、蝸牛内の感覚器官を刺激して、それで音が鑑別され、そこから聴神経の中に信号が行きます。