ヘルニアのいろは

病気のいろは
頭の病気 - 脳
頭の病気 - 目
頭の病気 - 鼻
頭の病気 - 口
頭の病気 - 耳
頭の病気 - 他
全身の病気
内臓の病気 - 肺
内臓の病気 - 心臓
内臓の病気 - 胃
内臓の病気 - 肝臓
内臓の病気 - 腸
内臓の病気 - 腎臓
内臓の病気 - 他
骨の病気
関節の病気
血液の病気
皮膚の病気
心の病気
女性の病気
性関連の病気
その他の病気
深呼吸ダイエット
ヘルニアとは ヘルニアの種類 ヘルニアの症状 ヘルニアの合併症
ヘルニアの原因 ヘルニアの予防策 ヘルニアの治療法

 ヘルニアの方に役立つ無料小冊子

ヘルニアとは

ヘルニアとは、先天的または後天的原因で、体内の臓器や組織の一部があるべき部位から逸脱(脱出)した状態のことです。代表的なものに「椎間板ヘルニア」がありますが、これは椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板において、何かのはずみで線維輪という周辺の硬い部分が破れて、髄核などの中身がはみ出した状態をいいます。

ヘルニアは腹部の内臓に多くみられ、たとえば脱腸とも呼ばれる「鼠径ヘルニア」は、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。ちょうどタイヤの弱くなった部分から内部のチューブが突き出ているのに似ています。また、「腹壁ヘルニア」は、腹壁に生じた裂け目から腹部の内臓が腹膜に包まれたまま腹腔外に出てくるものです。他にも、臍ヘルニア、横隔膜ヘルニア、脳ヘルニアなどがあります。

ヘルニアは、組織の一部が脱出していること自体は深刻な問題ではありませんが、椎間板ヘルニアでは坐骨神経痛などの激痛が、鼠径ヘルニアでは「嵌頓」という合併症が、問題になってきます。


ヘルニアの種類

●椎間板ヘルニア
椎間板へルニアには、「脱出型ヘルニア」と「膨隆型ヘルニア」の2つのタイプがあります。脱出型ヘルニアは、繊維輪にヒビが入り、そこから中の髄核が繊維輪を完全に飛び出すというもので、症状は激しいものの数ヶ月で症状が軽くなるという特徴があります。脱出型ヘルニアには、飛び出た髄核のかけらが椎間板の中にある髄核と分離してしまう「完全脱出型」があります。膨隆型ヘルニアは、繊維輪にヒビは入らず、髄核が繊維輪から飛び出さずに髄核と繊維輪が一緒に膨れ出るもので、症状が解消するまでに時間がかかるケースが多いのが特徴です。
脊椎の間でクッションの役割を果している椎間板は、だいたい20歳を過ぎた頃から年齢とともに次第に衰えてくるため、働き盛りの20歳~30歳代の、事務員、運転手、セールスマン、看護士、(家事をする)主婦などの人に多く見られます。
椎間板が飛び出ているだけなら、大した問題になることはありませんが、問題になるのは、飛び出したものが神経を圧迫することにより坐骨神経痛などを生じることです。

●鼠径ヘルニア
「鼠径ヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気で、「脱腸」とも呼ばれています。ちょうどタイヤの弱くなった部分から中のチューブが突き出てくるのに似ています。
鼠径ヘルニアには、「外鼠径ヘルニア」と「内鼠径ヘルニア」がります。
鼠径部にはお腹と外をつなぐ筒状の鼠径管がありますが、加齢とともに筋膜が衰えて鼠径管の入り口が緩んでくると、お腹に力を入れた時などに筋膜が緩んでできた入り口の隙間から腹膜が出てくるようになり、それが次第に袋状のヘルニア嚢に伸びて鼠径管内を通り脱出します。これを「外鼠径ヘルニア」といいます。また、加齢により腹筋が衰えてくると腹壁の弱い場所を直接押し上げるようにして腹膜がそこから袋状に伸びて、途中から鼠径管内に脱出します。これが「内鼠径ヘルニア」です。
鼠径ヘルニアは、年齢を問わず患者の80%以上が男性ですが、特に40代以上の男性に多いのが特徴です。女性は鼠径管のサイズが男性より小さく、比較的腸が脱出しにくいためとだと考えられます。幼児にも生まれつきみられます。また、腹圧のかかる作業や立ち仕事に従事する人に多く見られ、便秘、前立腺肥大、肥満、多咳の人や妊婦も発症しやすいといわれています。
鼠径ヘルニアは成人と幼児では、成因や治療法も異なります。

●その他のヘルニア
脳ヘルニア、腹壁ヘルニア、横隔膜ヘルニア、臍ヘルニアなどがあります。


ヘルニアの症状

ヘルニアの症状は、種類によって異なります。

●椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、頸から腰まで場所を選ばずに発生しますが、ほとんどが腰椎で起こります。椎間板ヘルニアでは、立っていると辛い、腰が曲がりにくい、夕方になると腰や背中がひどく凝る、30分以上歩いたり腰を曲げると腰から足先にかけて痺れるような痛みがある、下腿の外側や足背または足指に知覚障害がある、夜間に腰痛のため目がさめる、といった症状が一般に現れます。ヘルニアが脊髄を圧迫すると、体幹や上下肢の痺れ、ボタンをかけにくい、階段を降りるときや歩行時に足に力が入らない、尿の出方が弱い、便秘、頻尿、インポテンツといった、脊髄症状が出ます。ヘルニアが神経根を圧迫すれば、首から肩腕にかけて重くダルく焼けるような痛みが走る、頚椎をそらすと腕に痛みが走るといった症状を生じます。また、ときには頭痛、頚部痛、めまい、吐き気といった症状を訴える場合もあります。 椎間板ヘルニアによる痛みの特徴的なものに、「坐骨神経痛」があります。普通は片側の足や臀部が痛くなりますが、ヘルニアの位置や大きさにより両側に見られることもあります。仰向けで足を伸ばしたまま上げようとすると激痛のためある程度以上は上げられません。症状が重い場合は、昼夜を問わず脚に激痛を感じることがあります。何番目の椎間板がつぶれるかによって痛みの部位は違います。

●鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは、外からさわると軟らかいコブ状の「膨らみ」や「しこり」として触れますが、体を横にすると自然に消えたり、手で押さえると腸が腹腔内へ戻るので触れなくなります。 腹圧をかけると再び膨らんでくるのでよくわかります。大きさも股の付け根に留まる程度のものから、男性の場合には陰嚢にまで達する大きなものまであります。 自覚症状も、腸が出入りしている間は軽い痛みや便秘が起きる程度で、特別な症状はありません。成人の場合は、力仕事をしたときなど、腹圧をかけたときに発見されることが多いものです。
一方、小児の鼠径ヘルニアは、生まれたときにすぐ発見されることもありますが、乳幼児期になってから入浴などの際に気づくことも少なくありません。一般に右側に多く出現しますが、一側を手術した後、反対側に出てきたり、両側に起こることも珍しくありません。


ヘルニアの合併症

●椎間板ヘルニア
病名ではないので厳密には合併症とはいえませんが、椎間板ヘルニアの特徴的な症状のひとつに「坐骨神経痛」があります。(「ヘルニアの症状」を参照してください)

●鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアで最も注意しなければならない合併症は、腸が脱出したまま戻らなくなった「嵌頓」と呼ばれるもので、脱出のまま長時間放置すると腸が血行障害を起こし、やがて壊死を起こした腸が腹腔内に引き戻されて腹膜炎を起こすなど、生命にかかわってきます。
女児の場合には、腸のかわりに卵巣が脱出することも多く、放っておくと同じような結果を招きます。万一、ヘルニアが戻らない場合は、治療機関で急いで戻してもらう必要があります。その際、腸が壊死している可能性が高い場合は、緊急手術が必要になります。


ヘルニアの原因

●椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアの第一に挙げられる原因は、加齢、つまり椎間板の老化です。椎間板の中心部のゼリー状の「髄核」の水分量は年齢とともに減少して弾力性を失い、圧力に耐えきれずに外側の固い線維輪に亀裂が生じて髄核が繊維輪を破って突出しやすくなります。これが神経を圧迫して脊髄圧迫症状と神経根圧迫症状を発生します。

椎間板ヘルニア発症のきっかけとなる日常生活での動作としては、背骨に負担がかかる姿勢、中腰で重いものを持ち上げる、引っ張る、腰を強くひねる、長時間の座り仕事や運転などが挙げられます。また、姿勢の悪さからくる生理湾曲の狂いは、腰への負担が非常に大きく、椎間板ヘルニアを引き起こす原因となるばかりでなく他の部位へも悪影響を及ぼします。

●鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの成因は、成人と小児で異なります。成人の鼠径ヘルニアは、多くの場合は年齢と共に鼠径部を支持する腹筋の筋膜の結合組織が弱くなったために腹膜が飛び出してきたものです。(種類ごとの詳細は「ヘルニアの種類」を参照してください。)
一方、小児の鼠径ヘルニアは、いわば"生まれつき"の要素が強く関係します。本来ならば、生まれてくるまでに閉鎖する腹膜鞘状突起というものが閉じずに開存し、下がってきた腹膜は袋状に残り、そこへ腸が脱出してヘルニアとなります。1歳までに自然閉鎖することもありますが、いったん消失しても年長になって再び開いてくることもあります。


ヘルニアの予防策

●椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、保存的療法では症状の緩和が見られないことも多く、手術も100%結果が期待できるわけではありません。ということは、椎間板ヘルニアにならないように予防することが大切です。 滑る、転ぶ、ねじる、ひねる、振動を与えるなどの運動が、衰えた椎間板に決定的なきっかけを与えることが多いといえます。背筋や腹筋は背骨への負担を少なくする働きがあるので、ハードな筋力トレーニングをする必要はありませんが、定期的に適度なスポーツを行うことで腹筋と背筋の筋力維持と向上を心がけましょう。また、肥満は背骨にとっても負担となるので、生活習慣病の予防もかねて減量することをお勧めします。椎間板にかかる負担である椎間板圧は、座った状態でもっとも負荷がかかりますので、作業や運転などの座りっぱなしの姿勢には気をつけます。また生理湾曲の狂いが生じないよう、日ごろから正しい姿勢を心がけることが大切です。

なお、腰痛対策として腹筋や背筋を鍛えるには、ウォーキングや腹式呼吸などがお勧めです。ウオーキングは、他の激しい運動に比べ腰への負担が少なく、腹筋、背筋の強化、足腰の筋肉を鍛えるのにふさわしい運動です。また、腹式呼吸は、腹腔内圧のアップや腹筋の強化につながり、椎間板ヘルニアの予防や治療に有効です。腹筋・背筋を鍛えることは椎間板ヘルニアの予防・再発防止には大変重要ですが、痛みがあったり実施場所の制約などがあって手軽にできない場合、どこでも手軽にできる腹式呼吸が効果的です。


ヘルニアの治療法

●椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアの治療法には、さまざまなものがあります。整形外科での治療では、保存的療法と手術療法がありますが、緊急に手術が必要な場合を除くと保存療法からスタートする場合がほとんどです。急性期は消炎鎮痛剤や筋弛緩剤を内服し除痛を図りながらコルセットなどで固定し、安静をとります。同時に、痛みのコントロールとしてブロック注射を行うことも多いでしょう。急性期を過ぎると、温熱療法、低周波治療、ストレッチなどのリハビリテーションがなされます。多くはこれらの保存療法で改善される場合が多いのですが、急性期が過ぎても症状が残存する場合は牽引療法や腰痛体操を行って様子を見ることになります。

潰れてしまった椎間板自体が完全に回復するのは難しいといえますが、椎間板ヘルニアの多くは、数カ月から半年の内に治癒してしまうことの方が多いようです。
たとえば2ヶ月で60%ほどの椎間板ヘルニアが自然に治るといわれており、多くは時間と共に改善されるものですが、それでも、排尿・排便困難、持続的な強い痛み、高度の下肢の麻痺などが見られる場合は、緊急に手術をする必要がある場合もあります。
椎間板ヘルニアの手術は、飛び出した髄核を取ることによって神経を圧迫状態から開放させるもので、難しいものではありません。ですが、手術をしても完全に良くならなかったり再発したりする場合もあります。

椎間板ヘルニアを含めた腰痛は、腹筋や背筋が鍛えられると軽くなります。それには、ウォーキングや腹式呼吸などがお勧めです。ウオーキングは、他の激しい運動に比べ腰への負担が少なく、腹筋、背筋の強化、足腰の筋肉を鍛えるのにふさわしい運動です。また、腹式呼吸は、腹腔内圧のアップや腹筋の強化につながり、椎間板ヘルニアの予防や治療に有効です。腹筋・背筋を鍛えることは椎間板ヘルニアの予防・再発防止には大変重要ですが、痛みがあったり実施場所の制約などがあって手軽にできない場合、どこでも手軽にできる腹式呼吸が効果的です。

●鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは、小児と成人とで成因が異なるのと同様に、治療の仕方も変わってきます。小児の場合、自然に治ってしまうこともあるにはあるのですが、それはきわめてまれなケースで、むしろ経過をみているうちに嵌頓を合併する危険性があり、また本人や両親の精神的ストレスを考慮すると、思い切って早期に手術することをお勧めします。手術の時期は普通、生後3カ月以降が安全ですが、嵌頓を繰り返すものや、巨大なヘルニアの場合は、その限りではありません。手術は突出したヘルニア嚢をできるだけ突出口で縛る「高位結紮」という術式で行われます。手術は10~15分で終わり、傷も小さく、合併症もみられません。
成人の場合は自然治癒はありえないので、たとえ症状がなくても、嵌頓から腹膜炎や敗血症を招く合併症のリスクを考えると、手術が最善の治療法だと考えます。また高齢者の場合であっても、循環器障害や呼吸器障害など重大な支障がない限りは、手術することをお勧めします。

鼠径ヘルニアの手術では、ヘルニア嚢を処理し、ヘルニアの発生防止機能を温存し、弱い支持組織を修復・補強します。成人の鼠径ヘルニアの手術方法には、バッシーニ法、メッシュプラグ法、腹腔鏡手術の3種類があり、鼠径ヘルニアの種類や病状によって術式が決まります。なお、組織の老化などに伴い、手術をしても中には再発する場合もあります。