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乳癌とは 乳癌の種類 乳癌の症状 乳癌の原因
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乳癌とは

乳癌とは、乳房組織(乳腺と脂肪組織)にできる癌腫(悪性腫瘍)です。腫瘍は乳腺を構成している乳管や、小葉の内腔の上皮細胞から発生します。細胞ががん化すると、周囲の正常細胞を殺しながら増殖していき、乳管を伝わって周囲に拡がったり、基底膜を突き破り周囲の脂肪組織や筋肉に食い込んだり、皮膚を突き破って潰瘍を形成したりします。さらには、リンパ管や血管に入り込み、周囲のリンパ節や骨、肺、肝臓、脳など多臓器に遠隔転移していきます。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを「浸潤がん」といい、同じ乳癌でも悪性度(進行のスピード、浸潤のしかた)はいろいろですが、他のがんと比べると、乳癌は比較的進行が緩やかで、局限性で完治が期待でき、たとえ進行を止められなくても症状に応じた治療手段が多いといった、概ねタチの良いがんであるといえます。そのため5年生存率なども比較的良いようです。

乳癌はがんの中でも発生率が高く、また世界中でよくみられる癌で、欧米では女性のおよそ10人に1人が一生涯に一度は乳癌にかかるともいわれています。日本でも、女性のがんではもっとも発生が多く、生活スタイルの欧米化に伴い年々増加傾向にあります。

乳癌の治療には、手術が最も有効とされ、最近では乳房温存手術も一般的になりました。また自分で触診できることとマンモグラフィーが早期発見に有効なので、疑わしい場合は手遅れにならないうちに専門医を訪れるようお勧めします。


乳癌の種類

乳癌は、「非浸潤がん」と「浸潤がん」という分け方の下で、さらに「乳管がん」「少葉がん」などに分けられます。
がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に広がり出ているものを「浸潤がん」といいます。非浸潤がんは乳がん全体の約10パーセントほどですが、転移もなく手術により100%治ります。
乳がんの約90%は母乳を乳口まで運ぶ乳管から発生する「乳管がん」で、残りの10パーセントは少葉がんと、特殊型と呼ばれる稀ながんで占めています。
特殊型には、粘液がん、髄様がん、嚢胞内がん、ページェット病などがあります。

●乳癌の病期
乳癌は、がん細胞の拡がり、たとえば乳房のしこりの大きさ、乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無などによって大きく5段階の病期(ステージ)に分類され、各病期に応じて治療法が違います。

【0期】
「非浸潤がん」のことで、がんが発生した乳腺の中にとどまっているもので、極めて早期の乳癌です。

【I期】
しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節には転移していない、つまり乳房の外に拡がっていない限局性とみられる場合。

【II期】
IIa期とIIb期に分けられます。

  IIa期: しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移がある場合、またはしこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がない場合。
  IIb期: しこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がある場合。

【III期】
「局所進行乳がん」と呼ばれ、IIIa、IIIb、IIIc期に分けられます。

  IIIa期: しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節が癒着していたり周辺の組織に固定している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側の内胸リンパ節が腫れている場合。あるいはしこりの大きさが5cm以上でわきの下あるいは内胸リンパ節への転移がある場合。
  IIIb期: しこりの大きさやわきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁に固定しているか、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたり皮膚がむくんでいるような場合。
  IIIc期: しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合。あるいは鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある場合。

【IV期】
骨、肺、肝臓、脳など、遠隔臓器に転移している場合。

●再発乳癌
乳房のしこりに対する初期治療を行った後、乳癌が再び出てくることを「再発」といいます。乳癌の再発は多くの場合ほかの臓器に現れるためIV期の「転移」を意味しますが、手術をした乳房の領域に出てくる場合は「局所・領域再発」といいます。


乳癌の症状

ごく初期の乳癌には自覚症状がほとんどありませんが、進行してくると以下のような症状が現れます。

●乳房にしこりがある  
   「しこり」は乳癌にもっとも多く見られる症状で、乳癌患者のおそよ90%以上の人に認められます。そのうち約80%の人が自己検診で発見しています。乳房に痛みのないしこりを認めたら、乳癌を疑って専門医を受診する必要があります。ただし、乳腺症でもしこりはできるので、この時点での過度な心配は不要です。また、痛みだけでしこりがない場合には、乳癌の可能性はほとんどないでしょう。

●乳房にえくぼのようなへこみがある  
 乳癌が乳腺の外に広がって乳房提靱帯に及ぶと、その部分の皮膚が萎縮してへこみができます。しこりの周囲の皮膚を指で軽く寄せると、その中央がへこんでえくぼの様に見えます。圧迫しなくても自然にへこむ場合もあります。

●腫れがあり、皮膚が部分的に赤みをおびている   
 広がったがんによって皮膚の下にあるリンパ管が部分的に、あちこちふさがり、溜まったリンパ液のため皮膚が盛り上がって毛穴がへこむために、皮膚がまるでオレンジの皮のようになってきます。また皮膚の微少血管もふさがるので充血が起こり、その部分が赤みを帯びてきます。

●皮膚がくずれて潰瘍ができている   
 がんが皮膚に及ぶと、皮膚がくずれて腫瘍や潰瘍ができたりします。

●乳頭にへこみ、ひきつれ、かたより、ただれなどがある   
 がんが乳頭の裏にでき、乳頭が裏側からひっぱられると、乳頭がへこんだり、ひきつれて向きがかたよっていることがあります。また授乳に関係無い時期や年齢なのに、痛みの無いただれや湿疹のようなものが乳頭にできたら、乳頭のがんであるページェット病の疑いがあります。  

●分泌物が出る   
 妊娠・授乳期ではないのに片方の乳頭からクリーム状や透明な液体が出てくる場合には注意してください。特に血の混じったような液体が出てくる場合には、しこりを作らないタイプの早期乳癌の唯一の症状であることもありますから注意が必要です。

●その他
 わきの下のリンパ腺が腫れたり、他の臓器に異常が見られる場合、乳癌が転移していることも考えられます。


乳癌の原因

乳癌発生に関与する因子としては、女性ホルモンのエストロゲンが第一に考えられます。
エストロゲンが多い人に乳癌が多いということから、以下の要因が乳癌のリスクファクターになります。

●初潮の時期が早い人や、閉経年齢が55歳以上と遅い人
●初産年齢が30歳以上と高い人
●40歳以上の未婚女性(1回も妊娠していない場合には、生涯を通じて乳癌のリスクが2倍になる)
●長期の女性ホルモン補充療法を受けている人
●標準体重よりプラス20%以上の肥満(エストロゲンは脂肪組織でも作られるため)
●動物性脂肪、特に乳脂肪の摂取量が多い人(乳脂肪中のコレステロールが卵胞ホルモンの過剰分泌を促すといわれている)

また、乳癌発生遺伝のBRCA1、BRCA2 を持つ女性(日本では100人に1人ほど)においては、50%以上の高率で乳癌にかかる可能性があるといわれ、●「乳癌や良性乳腺疾患の既往がある人」や、●「家族に乳癌の既往歴のある人」などもハイリスクファクチャーになります。母親、姉妹などのごく近い親族に乳癌の人がいる女性では、乳癌の発生率が2~3倍になります。なお、BRCA1、BRCA2遺伝子変異以外にも家族性乳癌は存在すると考えられていますが、いまだに原因遺伝子は明らかになっていません。

その他にも、乳癌の約60%は60歳以上の女性に発生し、75歳を過ぎるとリスクは最大となるため、●「加齢」も大きな要因です。また、●「放射線」も危険因子であり、30歳未満の人が癌治療のための放射線療法やX線の大量照射などにより放射線を浴びると、乳癌発生のリスクが増加します。


乳癌の治療法

乳癌の治療法には、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン療法などがありますが、治療の方法は乳癌の病期(ステージ)と種類によって異なります。癌の種類によって増殖の速さ、転移しやすさ、治療への反応が大きく異なるため、治療方法は複雑多岐にわたり、ひとりの患者への最適な治療法について医師の間でも意見が分かれることがあります。
乳癌の治療は基本的には手術が中心になります。放射線療法や化学療法、抗ホルモン薬による治療などが行われることもありますが、多くの場合、これらの方法を組み合わせて治療が行われます。

●手術療法
乳癌の手術には、主に「乳房切除術」と「乳房温存手術」があります。
「乳房切除術」はがんのできた乳房をすべて取り除く手術です。さら大胸筋や小胸筋といった胸の筋肉を切除するか残すかで術式が細分化されます。(ハルステッド法はこのうちのひとつです。) 乳房切除術は、しこりの大きさが比較的大きかったり、しこりは大きくなくても癌細胞の乳腺内の広がりが大きいと考えられた場合に選択されますが、いずれの術式も、術後の患者さんの心理的なショックは少なくありません。
一方、「乳房温存手術」は、しこりを含めてある程度の範囲の乳腺を切除しますが、乳房のふくらみを残すことができ、変形は残るものの美容上好ましい手術法です。最近では比較的しこりの小さな乳癌に対しては乳房切除をしても乳房温存療法をしても生存率が変わらないことが明らかになり、日本でも乳癌に対する手術は温存手術が標準になりました。乳房温存手術の場合、残した乳腺内での再発を防止するため、術後に残した乳房に約5週間ほど放射線を照射します。また最近は「センチネルリンパ節生検」という方法で、わきの下のリンパ節をごく一部しかとらない方法もあります。

わきの下のリンパ節を手術で取り除くと、後遺症として腕や肩の痛みやしびれやむくみ、運動障害が生じることがありますが、これは術後のリハビリテーションによりある程度回復が期待できます。
乳癌の手術は消化器癌の手術と比較するとずっと患者さんの負担が少なく、所要時間も約2時間ほどと短く、輸血を要することはほとんどありません。翌日には食事や歩行も可能です。術式にもよりますが、術後2日から1週間くらいで退院が可能です。

●放射線療法
放射線を照射してがん細胞を死滅させる方法です。乳がんの原発病巣だけでなく転移部位に対しても放射線治療が行われます。
乳癌治療における放射線療法は、①乳房温存手術後に残存乳房に対して行う、②乳房切除術後に胸壁に対して行う、③再発・転移をきたした部位に照射する、などの場合があります。副作用は、放射線照射部位の日焼けのような皮膚炎や、まれに放射線による肺炎などが挙げられます。

●化学療法(抗がん剤治療)
抗がん剤には、内服薬または点滴静脈注射薬があります。化学療法はがん細胞を死滅させる効果がありますが、がん細胞以外の骨髄細胞や正常の細胞の一部も死滅させる作用もあります。乳癌は比較的早期であってもがん細胞が剥がれ落ちて血液やリンパ系を通ってからだの他の部分に拡がっていることがあり、手術や放射線照射による局所的な治療だけではこれらを取り除くことができない場合があります。再発防止のための術後補助療法は、このような全身に拡がっているかもしれない微細ながん細胞の成長を抑えます。
一方、再発や転移をきたした場合に化学療法を行なう場合があります。乳癌に対して効果が認められている抗癌剤は多岐にわたり、いろいろな種類の抗癌剤を組み合わせて使用します。使用する抗癌剤によってみられる副作用はさまざまで、その程度もいろいろです。

●ホルモン療法
乳癌治療においては、女性ホルモンを抑制するような薬剤も頻繁に使用します。抗がん剤同様再発防止目的で使う場合と、再発・転移がんの治療に行なう場合があります。一般にホルモン療法は化学療法と比べ副作用は軽くすみ、更年期症状が主な副作用といえます。長期投与に伴って、脂肪肝やそれに伴う肝機能障害、血栓症、子宮体癌の発生、骨疎しょう症、性生活への影響などがあります。
現在の乳癌治療では手術単独で済むことは少なく、多くの場合化学療法あるいはホルモン療法あるいはその両方を併用しています。